余白の先

趣味はなんですか?と聞かれると本当に困ってしまう。

というのも、趣味がなくて答えられないという訳ではない。

趣味がありすぎて一つを挙げられないからだ。

 

一番長く続いている趣味は「読書」かな。

幼稚園でも外で遊ぶより、室内で絵本を読んでいたように思う。

なにがきっかけで本が好きになったのか分からない。

ただずっと本を読んできた。

 

小学校では友達と本を貸し借りしながら、読むスピードを競ったり、小説の続編を書いてみたりした。

 

特に私が大好きだったのは、この本だ。

           

辻村深月さんの「子供たちは夜と遊ぶ」。

小学4年生の時に出会った本だけれど、今でも私が最も好きな本である。

 

小説は文字だけで描かれる物語だ。

文字だけ故に、敬遠してしまう人もいるかもしれない。

でも、文字に込められた世界観は無限の広がりがあるのではないかと思う。

 

映画やドラマは世界観が作りこまれていて、想像できる余白が少ない。

(もちろん映画やドラマは、その分よりリアルに想像することができる。)

『想像の余白』が大きければ大きいほど、作品はそれぞれにとってかなり違うものになるだろう。

 

余白から想像を膨らませることが苦手な人には、小説はつまらなく感じるかもしれない。しかし、それが容易になったならば、自分だけの世界観・キャスティング・演出ができる。

 

 

短編集を読んだり、挿絵が多い本をまずは手に取っていただきたい。

文字の奥にある世界は、とても広いです。

 

 いつか辻村深月さんの作品も手に取ってもらいたい。

道端の雪だるま

私が覚えている一番古い記憶は、雪だ。

父親の転勤に伴い、私たちは3階建てのマンションに引っ越しをすることになった。

行きの新幹線のことは何一つ思い出せないけれど、マンションに到着した瞬間は鮮明に思い出せる。

     

 

 

新しい青いマンションは、当時の私にはとても大きく見えた。

上からは、はらり、はらりと舞う雪。

マンションの駐車場で遊ぶ同い年ぐらいの子たちの高い声。

 

 

気づいた時には、母に背中を押され子供たちの輪に入って雪遊びを楽しんでいた。

幼稚園に入る直前に引っ越しをしてきたのだけれど、今でもこんなにも覚えているというのはその引っ越しがあまりにも衝撃だったからだろう。

それまでも父の転勤で引っ越しはしていたが、雪と子供たちのおかげでインパクトが大きかった。

 

雪が冷たくて、霜焼けをしないように手袋をさせられていた。

溶けた雪が手袋に染み込んできて、手からじんじん寒さが伝わってきた。

遊んでいた子たちと一緒に手袋を捨てて、小さな雪だるまを作っては笑い転げていた。

 

 

大人たちは雪が降っていても、休校かどうかや電車が止まっていないかしか気にならなくなってはいないだろうか。

私たち家族は雪が降るたび引っ越しの日を思い出す。

 

雪が降り積もった翌日に散歩してみると、道のあちこちに子供が作った雪だるまを発見できる。今年の冬は大人も雪を楽しんでみてほしい。